怖い話

自身の体験+αの怖い話を載せていきます

恐怖のささやき

小学生から仲の良い友達が経験した話。
現場には私もいたので、私自身も近くで見聞きしている。

その友達は大学を卒業し、とある都市で仕事を始めることになった。
仮にその友達はAとしよう。
一人暮らしになるので住む場所を決めたのだが、Aは…良く言えば節約家、悪く言えばケチなので、とにかく安い物件を探すことに全力を注いだそうだ。

東京で言う新宿に近いような場所で、最寄りの駅まで歩いて15分程度、アパートではあったが、フルリノベーションが行われており新品同様で、家賃は28000円。立地条件からすると破格である。

「ワケあり物件じゃないの?」

当然の質問を投げ掛けたが、不動産屋からは特に何も言われず、たまに水の出が悪くなり、下水の臭いもするとのことでこの価格だったそうだ。

私は母からの遺伝か、霊と波長?が合うと“感じる”ことができる体質であり、Aもそのことを知っていたため、「一度来て見てくれないか?」と言われたが、いかんせん見えないし、波長も私から霊に合わせることはできないので、何度か遊びに行ったことはあるが、特に何かを感じるようなことはなかった。

そうこうしているうちに半年が過ぎた。

ある日、Aから電話があり、「ちょっと来てくれ」と言う。
週末だったので、すぐにAのアパートへ向かうと、アパートから少し離れた自動販売機の前に立っていた。
私の姿に気付くと、安堵の表情で駆け寄って来た。

私「どうした?」

A「と、とりあえずファミレス行こう。そこで話すよ」

近くにあるファミレスに向かうと、Aは話し始めた。

実のところ、住み始めて2ヶ月が経過した頃から、少しおかしな現象が起きていた、と言う。

ある日、テレビを見ていると、テーブルに置いてあった本がめくれた。
季節は初冬。窓は開けていなかったし、エアコンを入れていたわけでもない。
しかも本はハードカバータイプ。自然にめくれるとは考えづらい。
が、ここはいったん気にしないことにした。

そしてまた別の日。
夜に寝ようと部屋の電気を消そうとしたところ、テレビが勝手に付いた。
Aの家のテレビは古く、リモコンも壊れていたため、電源はテレビ右下のボタンを直接押さなければならない。
リモコンに電池は入れていないし、テレビとベッドは離れている。
が、ここも接触不良と解釈し、気にしないことにした。

そして私に電話をした当日。
ベッドの上でケータイで遊んでいると、キッチンの水道から水が勝手に出た。
ちょろちょろと出るのではなく、最大パワーの状態で。
当然だが、Aはベッドの上。触れられるはずもないし、接触どうこうのレベルではないため、慌てて外へ出て、私に電話を掛け、現在に至る、といった具合である。

もしかすると私が何か感じることができるかもしれないので、一緒に家に行ってみよう、と提案し、渋々ながら了承したので、Aと一緒に家へ向かうこととなった。

相当に焦っていたのか、部屋の電気は付けたままであった。
Aの怖さを紛らわすため、コンビニで買ったビールを飲みつつ、しばらく待ってみたが、特に何か感じることはなかった。

「アイツに電話してみるか?」

“アイツ”とは、大学のサークルで一緒だった友達だ。
ここではアイツをBとする。
大学では“心霊倶楽部”というオカルトサークルに所属しており、Bとはそのサークルで知り合った仲だ。

そして偶然にも、AとBは高校時代からの友達で、自然と私たち三人は意気投合、現在でも頻繁に会う仲間となったのだ。

Bは容姿端麗で頭も良かったが、コミュニケーション能力が低かった。
サークルでもほとんど話はせず、黙々とオカルト系の小説を読んでいるだけだった。

そんなBだが、実は凄まじい霊能力の持ち主なのだ。
とある事件により発覚したのだが、その話はまた次の機会にでも…。

Bは霊が見える、彼らの声が聞こえるのはもちろん、除霊や浄霊も行えるレベルだそうだが、本人は実行したことはないらしい。

そんなBに聞けば何とかしてくれる、そう思った私はBに電話を掛けようとした。

…Bがそんな能力を持っているなら、Aが部屋を借りる時など、事前に聞けば良かったんじゃないか、と思った方も多いだろう。

Bは、こういうことで頼りにされることを極端に嫌う。
自身がこういった能力を持って生まれてきたことを恨んでいるのだ。
…確かにそうかもしれない。このような能力があっても、日常生活では何の役にも立たないし、むしろ普通の生活に支障をきたす可能性すらある。

このことが頭をよぎり、一瞬Bに電話を掛けるのがためらわれたが、状況が状況だ、ケータイの連絡先からBを探し通話ボタンを押す。

Bはすぐに電話に出た。私たちの状況を分かっていたのだろう。
開口一番で「Aに代われ」と言うので、そのままAに電話を渡す。

ここからはAとBの会話の内容。

B「すぐに部屋から出ろ。それですぐに引っ越せ」

A「は?そんなにヤベェの?引越しって言ってもすぐにはできねぇし…B、何とかしてくれよ」

B「…悪いけどムリだ」

A「一体何が起こってんだよ!」

B「…今、部屋に女はいないよな?」

A「いないけど…何だよ」

B「電話に出てからずっと、女の声で“死ね死ね死ね…”っていうのが聞こえてるんだ。すぐに部屋を出ろ!」

Bによると、私からAに電話を代わってからずっと、女の声の“死ね死ね死ね…”という囁きが聞こえていたのだという。
送話口にかなり近い場所で囁いているように聞こえたので、恐らくはAのすぐそばにいたのではないか、ということである。

その後Aは私の家の居候となり、1週間後に引っ越すこととなった。
突然の引越しなので、色々と痛手はあったようだが、そんなことは言っていられない状況であったので仕方ないだろう。

引越しの前日、Aと一緒に荷物をまとめていると、大家さんのご主人が訪ねて来た。
急な引越しで大変だろうから、と手伝いに来てくれたのだ。

Aによると、大家さんは性格があまり良くないようで、アパートの管理?に事うるさく、また本人の前で嫌味を言ったりなど、A自身もあまり関わり合いを持っていなかったが、その大家さんのご主人は人当たりが良く優しかったので、この機会に思い切って聞いてみることにした。

このアパートでは何かあったのか、と。

ご主人は奥さん(大家さん)には絶対に内緒だからね、と念を押したうえで、その事実を話してくれた。

結論から言えば、女性の自殺であった。
ご主人も詳しくは知らないようだが、大病を患っており、その苦に耐えられず、首を吊ったそうである。

またBの霊視によると、この世へかなりの未練を残していたようで、充実した日々を過ごしていたAを羨み、そして妬み、Aを道連れにしようと画策していた、とのことである。

あくまでもBの見解なのだが、霊現象というのは、自ら意図的に“見る”のではなく、霊から“見せられる”というのが基本であると言う。

そして、霊から“見せられる”という状況は、その霊に既にかなり干渉されている証拠なのだそうだ。
通常、日本人は守護霊や先祖に守られているので、霊から干渉されることは少なく、“見せられる”ことはまずない。

しかし、守護霊が弱っていたり、霊が強力すぎる場合、精神部分に干渉され、霊の影響を受けやすくなる、とのことである。

今回のAの場合は後者。Aの守護霊はかなりの力を持っているそうだが、それを抑えて霊現象をAに“見せる”レベルであり、Bによれば既に悪霊に近い存在で、非常に危険であったと言う。

ただし今回の霊は地縛霊であったらしく、その後、特にAへの影響はなく、引越し後は問題なく過ごせているようだ。

皆さんも部屋を借りるときは、お気を付けください…。